― 秋の夜長に、あかりで偲ぶ ―
秋が深まるにつれて日が短くなり、法要やご供養の場では「灯(あかり)」をともす機会が増えます。
ろうそくやキャンドルの灯りは、故人の魂を導く象徴とされ、古くから仏事には欠かせない存在です。
しかし近年では、火災事故や火傷のリスクを避けるため、安全な照明の使い方 があらためて見直されています。
■ 灯りに込められた意味
仏教では「灯明供養(とうみょうくよう)」と呼ばれ、光を捧げることは「無明(迷い)を照らす行為」とされています。
特に秋の彼岸や年末の法要では、灯をともすことで「故人への祈り」と「心の静けさ」を表します。
全日本仏教会によると、「灯明は心の清浄をあらわすものであり、供養の基本形」と位置づけられています(※全日本仏教会『仏教と現代生活』より)。
■ 火を使う供養で起こりやすい事故
消防庁の統計によれば、住宅火災のうち約6%がろうそくなどの火気器具による出火です(※消防庁「令和5年版 火災の実態」)。
特に秋冬は空気が乾燥し、布製の祭壇幕・線香・供花など可燃物が近くにある環境で行うことが多いため、注意が必要です。
よくある事例
- 法要後の後片付け中に、ろうそくの火を消し忘れる
- 小さなお子さまやペットが灯立てを倒す
- 仏壇近くに置いた花・造花に引火
- 強風・エアコンの風で炎が移動する
■ 安全に灯を供えるための3つのポイント
① 不燃マット・耐熱皿を使用
仏具店で販売されている「防炎マット」や「耐熱ガラス皿」を敷くことで、テーブル・祭壇の焦げを防止。
② 消えるまで見守る・外出前に確認
離席・就寝前・退出前には必ず火を確認。「誰かが残っているから大丈夫」は事故のもとです。
③ LEDキャンドルの活用
最近ではLED式のろうそくや電池式の灯明を利用される方も多いです。
■ 出典・参考リンク
- 消防庁「令和5年版 火災の実態」
https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/ - 全日本仏教会『仏教と現代生活』
- 日本防炎協会「防炎製品と火災防止」
- 浄土宗防災委員会「寺院防火対策マニュアル」